だんだんと暗くなってきて、そろそろ明かりを点けようかという時間。
家にいると、迷いなく照明のスイッチをONにする。
そこに何らかの意識なんてない。あるわけない。
ただの、いつもの習慣だ。
のどが渇いたから水を飲むとか、
2階に行きたいから階段上るとか、
そのあたりと同じレベルの、ただの反射的行為。
だからもし、何時ころスイッチをONにした? なんて聞かれても全然覚えていない。
みんな、そんなもんでしょ?
もしかしたら、幼いころはウキウキして照明を点けていたかもしれないな、なんて一瞬考えたりもしたけれど、自分の子供たちを見ていたら、そんなことはなさそうだと思った。
だって、遊びに夢中の彼らは、部屋が明るくなったことにすら気づいていないみたい。
ところが、ことキャンプとなると、まったく気持ちは変わってくる。
本の文字が読みずらくなってきたから、
ナイフの手元が見えずらいから、
そろそろランタンを点けようかと思って腰を上げ、ふと辺りに目を向けると、そこには息をのむ景色。
空は青と濃紺のグラデーションに橙が差し込み、うっすらとした月が浮かんでいる。
目の前の森のなかに早くも出てきた暗闇の一角は、ぬめっとした液体のようだ。
そんな場面に気づいたぼくは、はたしてランタンに明かりを灯すか、それともこのままもう少し自然に身をゆだねていようか、迷ってしまう。
家にいるときは無い感覚だ。
昼と夜の境に現れる、うっとりする美しさも何やら不穏な不気味さも、街中の日常にはないもので、やっぱりキャンプ楽しいなって毎度のように実感するその瞬間が、ランタンを灯すタイミング。
たまに充電忘れで点かないのは、相変わらずなんだけどね。
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