アルコールストーブ(アルスト)は、アルコール燃料を使うアウトドア用バーナー。
燃焼音がしなくて、とても静かなのが特徴。
シンプルでアナログな、使っていて楽しいギアです。
トランギアのアルコールバーナーは、そのアルストの中でもっとも代表的な製品。
もし初めてのアルストを検討しているのなら、このトランギアがおすすめ。
スペックや火力などに突出した部分はないけれど、クセのない扱いやすさ。
便利さだけを追求した道具とはひと味違う、趣きのある佇まい。
真鍮製の頑丈なボディは、使えば使うほど味が出てきます。
かく言うぼくも、初めて買って、現在も所有している唯一のアルストがこのトランギア。
絶対的な性能より、
『良いモノを長く使い込みたい』
という趣向の人にはぴったりの道具です。
アルスト界のスタンダード【トランギア・アルコールバーナー】
現在、アルコールストーブはたくさん存在していますが、それらの元祖とも原点ともいえるのがトランギアの『アルコールバーナーTR-B25』。
歴史あるトランギアの象徴とも言える製品で、半世紀以上に渡りロングセラーで有り続けています。
- サイズ:径7.5cm×高4.5cm
- 重さ:110g
- 素材:真鍮・コットン(内芯)
- 燃焼時間:タンク2/3の注入量(約70ml)で、約25分間燃焼
トランギア(Trangia)
1925年創業、北欧スウェーデンにある老舗アウトドアブランド
その仕様も姿も、発売当時よりほぼずっと変わっていないというから驚きですよね。
まさに、アルコールストーブ界のスタンダード。
定番中の定番です。
アルコールバーナーの構成は、本体・蓋・消火&調整用蓋の3点。
蓋にはパッキンが付いており、燃料を入れたまま移動してもこぼれません。
消火&調整用蓋は、可動部の開け具合で火力の調整ができるようになっています。
完全に閉じた状態で被せれば消火します。
素手では危険なので、耐火手袋またはプライヤー等の道具を用意しましょう。
未使用時は蓋、消火&調整用蓋の順で被さり、ひとつにまとまります。
トランギア アルコールバーナーのメリット
トランギアにかかわらず、アルコールストーブ全般に関するメリットでもあります。
大雑把にまとめると、便利ではないけど手軽で簡単だし、使っていて楽しいよって感じ。
趣きを楽しむ道具です。
シンプルで頑丈
構造がとてもシンプルなのでほぼ故障しません。
世の中に絶対はないものだけど、こいつが故障したって話は聞いたことありません。
メンテナンスも必要なく、汚れが気になるなら拭けばいいくらい。
真鍮製で非常に頑丈なのも良い。
扱いに気を使いません。なんなら踏んでも大丈夫!
実際、不注意から片足で完全に踏んだことがありますが、無事でした。
ぼくの体重は64キロ。大雑把に計算して、かかった重さは半分の32キロ。
と言うことは、トランギア・アルコールバーナーの耐荷重は32キロ以上と考えられる。
踏んだのは本当ですが耐荷重は想像なので、信じすぎないでください。
燃料の入手が簡単
燃料用アルコールは、ホームセンターやドラッグストアで簡単に手に入ります。
ぼくがいつも使っているケンエーは、店頭なら500mlで約300円くらい。
ネットでも売っていますが、お店で買った方がだいたい安いです。
おなじ燃料でもOD缶やホワイトガソリンに比べ、はるかに入手が楽。
あとはアルコール対応の容器に移し替えて、必要な量だけ持ち運べるのも便利。
ただ、燃料は安いですけど燃費は良くないので、コスパで考えるとそこまでお得感はありません・・・。
穏やかで静かな使いごこち
アルストは静かだから、自然の音を邪魔しないのが良い。
とはよく聞く言葉。
まぁ実際とても静かなんですが、ぼくなんかは、ガスバーナーの『ゴオッ』という燃焼音も嫌いじゃない。
むしろ、あの音で「キャンプ来たな~」って実感を覚えるくらいです。
なのでアルストを使う前は「静かだからなんなの?」って感じだったんですけれど、使ってみたらわかりました。
朝霧のなか、アルストの前で静かに湯が沸くのを待つ感覚は、まるで禅。
静かなの、良いw
火力調整ができる
トランギアのアルコールバーナーは消火蓋に火力調整機能が付いているので、強火~弱火まである程度のコントロールが可能です。
ざっくりとした調整ですが、慣れれば煮物・炒め物・炊飯と、だいたいなんでも出来ますよ。
アルコールストーブ業界は、火力調整できないモデルが普通にあります。
点いているか消えているか。
ONかOFFか。
その二者択一がストイックでカッコ良くもあり、不便さも含めて使いこなす。それがアルスト道。
なんて言いたいところですが、火力調整は出来たほうがやっぱり便利。
キャンプエンジョイ勢のぼくは、ヘタレてそう思うのです。
なので、アルストを一つだけ持つなら。
もしくは、最初のアルストに選ぶなら。
オーソドックスで使いやすいトランギアはおすすめです。
トランギア・アルコールバーナーのデメリット
メリットと同じく、アルコールストーブ全般に言えるデメリットでもあります。
いろいろあるんだけど、便利さを追求するタイプの道具じゃないので仕方ありません。
それも含めて楽しむくらいで丁度いいです。
火力が弱い
ガスバーナー等とくらべると、火力が弱いです。
お湯が沸くのをのんびり待つのも良いですが、さすがに毎回ではねぇ・・・。
風防やゴトクの工夫など、使い方である程度はカバーできるものの、気温が低くなってくると火力の弱さはさらに顕著になってきます。
なのでぼくは、アルストをメイン火器で使うのは暖かい時期だけ。
冬はガスバーナーがメイン。
アルストはその脇でゆっくりスープを温めるとか、そんな感じです。
そういう使い方なら全然OK。
風防・ゴトクが必須
トランギアのアルコールバーナーは、クッカー等を乗せるゴトクが必要です。
それが無いと、炎を上げるだけしか能のない、ただの小さな壺に成り下がってしまいます。
他のアルストにも言えることですが、風に非常に弱いので風防も必須。
ちょっと炎が揺れる程度の風でも、火力は大幅に低下します。
ですが真の問題はそこじゃない。
本当に悩むべきは別にある。
その真の問題とは、風防もゴトクも選択肢が多すぎて、自分にとってのベストを見つけ出すまで大変なこと。
それほどコンパクトでもない
アルストには軽量コンパクトな製品が数多くあります。
その中でトランギアのアルコールバーナーは、それほどコンパクトでもありません。
さらに風防・ゴトク・燃料が必要。
ぜんぶ揃えると、小型のガスバーナーと比べても、たいして違いが無かったりします。
使用するゴトクや燃料の量にもよりますが、個人的には決してコンパクトではないと思います。
ただ、その分ほかのアルストと比べ機能的で頑丈なので、トランギアはこれで良し!
狭い空間で使えない
狭い空間とは、例えばテントの前室など。
思いのほか天候が荒れたときなど、そこで調理することがたまにあります。
閉め切ると、密室とはいかないまでもかなりの閉塞空間です。
炎の調整があまり効かないアルストは、危なくて使えません。
トランギアのアルコールバーナーは多少の調整が効くものの、やはり危なくて使えません。
さらに、燃料アルコールの気化ガスは毒。
狭い場所で使うのは絶対ダメです。
本当に低温に強いのか?
トランギアに限らず、『アルコールストーブはガスと比べ低温に強い』ということをよく聞きます。
これに対し、冬キャンプ大好きなぼくの個人的な感想は『そんなに低温に強くない』です。
というのも、もともとの火力が低いから、気温が下がると火力が足らなくなります。
マイナス10℃くらいになると、着火は出来てもなかなかお湯が沸きません。
いっぽう『寒さに弱い』と言われるガスですが、ちゃんと極寒冷地用に高出力バーナーを使えば普通に火力がでます。
使い方や道具の選び方も関係するのでしょうけど、極低温下ではガスのほうが簡単かつ確実です。
個人的には、5℃を下回ったらガスがメイン。アルストはサブにします。
ちなみに最強はガソリンバーナー。
まとめ
そもそもぼくはガス派でした。だって便利なんだもの。
トランギアのアルコールバーナーも、買ったあと数回使っただけで、あとはずっとお蔵入りしてました。
でも、とあるキッカケから再び使うようになったらまぁこれが良くて、今ではすっかりレギュラーギア。
ここ一年くらいはメイン火器として、アルコールバーナーのみでキャンプに行くことも多いです。
がっつりと使い倒したので、今回レビューしてみました。
アルコールバーナーの良さはたくさんありますが、個人的に魅力的なのは、
『静かで趣きがある』
『炎を扱っている感じがする』
『アナログな楽しさ』
ってところ。
自然は大抵の人の想像以上に音に満ちた空間で、静寂にすら音色を感じます。
それを邪魔しないのが良い。
暑くて焚火する気がしないときでも、炎で遊んだ気分になるのが良い。
便利さとはまた違ったベクトルでキャンプを充実させてくれる。
トランギアのアルコールバーナーは、自分にとってそんな道具です。
ちなみに再び使うようになった理由は、満足のいく風防・ゴトク・プライヤー・燃料入れが揃ったから。
そういう意味でも、まぁ面倒な道具よね(笑)
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