ソロキャンプ用のケトルとして定番中の定番ギア、【トランギア325ケトル・0.6L】。
まさに一人用といった感じの、コンパクトで可愛らしいケトルです。
ぼくもずっと愛用していて、もうかれこれ5年の付き合い。
コーヒーやカップ麺の湯沸かし、レトルト食品の温め、熱燗作りまで幅広く活躍しています。
シンプルな形状で焚き火でも使いやすく、とくにソロ向けの小さなウッドストーブとは抜群の相性です。
言わずと知れた名品【トランギアケトル0.6L】。
使い倒して倒して倒した、所有5年目の感想がこちらです!
【トランギアケトル0.6】レビュー
スウェーデンのアウトドアメーカー “トランギア”。世界中でアウトドア好きたちに愛用されている、1925年創業の老舗です。
この【トランギア325ケトル】も、その長い歴史を感じさせる逸品。レトロな雰囲気が漂うかわいらしい見た目は、昔からほとんど変わっていません。
それは優秀なギアだからこそ。
ずっと変わらないのは、すぐれたプロダクトデザインである証拠。究極の機能美ってやつですね。
ソロにちょうどの0.6L
ラインナップは【0.6L・0.9L・1.4L】の3種類。
一般的に0.6Lか0.9Lがよく選ばれていて、アウトドアギアとしての使いやすさと、かわいらしい見た目が見事に両立した傑作ギアです。
他にも、蓋のノブがステンレスタイプのものや、ハンドルが取り外し式のモデルも存在します。
ぼくが持っているのは、通常タイプの0.6L。
- サイズ:径13.5 × 高さ7.5cm
- 重量:140g
- 容量:0.6L
- 素材:アルミ
手にしてみると、誰もが「小っさ!」って言うであろうサイズ感。
容量は0.6Lですが、使用上の実容量は頑張っても0.5Lくらいかな。
入れすぎると、沸騰したとき注ぎ口から溢れてしまう。
なので、『いろいろ使うならソロ専用、コーヒーなどの湯沸かしなら2人でも』といった感じです。
ひとりで使うなら、カップラーメンもいけるしレトルトの湯煎もできる。
ソロにはちょうどの絶妙なサイズ感です。
シンプルで使いやすい
小さいながらもケトルとしての使い勝手はたいへん良く、『湯を沸かし注ぐ』という点においては、クッカーよりもはるかに便利。
まず、底面積が広く蓋もあるので、沸騰が早い。
100ml程度ならクッカーやシェラカップと大差ありませんが、300~400mlくらいになると、ケトルで沸かした方があきらかに早いです。
注ぐときも、蓋が落ちないようになっているのが地味に助かる。
けっこう傾けても大丈夫です。
注ぎ口の水切れも良好。
ドリップコーヒーを淹れるさいも、とくに拘りのない人間である僕が使う分には、まったく不満はありません。
けっこうチョロチョロ注げます。
さらに、お湯とともにコーヒーへの並々ならぬ愛も注ぎたい人は、スキッターを使うという手もありますよ。
取っ手は、立てた状態で固定できるようになっています。
原理はひじょうにシンプルで、取っ手を垂直にすると溝にカチッとはまる仕組み。
【立てる⇔倒す】はちょっと力を加えるだけなので、火にかけたままでもまったく問題なく出来ます。
取っ手についているカバーは取り外しが可能。
もし焚き火で使うなら、外しておきましょう。
吊るしても安定するように、取っ手の頂点には角度がついています。
トライポットなどを使い炎の上に吊るすと、レトロな見た目も相まってとても良い雰囲気ですよ。
開口部が大きく、内部へアクセスしやすいのも利点。
アルストやカップ、小物などいろいろ収納できて便利。
洗いやすいのも助かります。
おかげで、粗挽きにしたコーヒーを直接煮だす『フィールドコーヒー(ワイルドコーヒー)』を楽しむのにも向いています。
またこのケトルは、注ぎ口が本体横幅からあまりはみ出していません。
このため引っ掛かりが少なく、スタッキングや収納がしやすいです。
バックパックで持ち歩くことも多いので、これがけっこう有難い。
量・形状ともに、ソロで使いやすいケトルです。
【0.6L】か【0.9L】か
ソロであれば、0.9Lも候補に入ってくるかと思います。
実際、この2つで迷う人も多いのではないでしょうか?
トランギアではないですが、ぼくは1.0Lのケトルも持っていて、使い勝手自体は0.9Lと変わらないハズです。
そこで感じた、0.6Lと1.0L、それぞれの使用感はこんな感じ。
【0.6L】
- 小型軽量焚き火台と相性良し
- バックパックでも持っていける
- 1杯分沸かすのにちょうどいい
- カップ麺+α米など2品以上には容量不足
【1.0L】
- 大き目な焚き火台でゆったりしたキャンプと相性良し
- 焚き火の上にずっと置いておき、何度も使える容量がある
- 水筒、湯たんぽを一度で満水にできる
- バックパックでは持って行きづらい
ぼくはバックパックに荷物を収めることが多いので、普段は0.6Lを使っています。
で、たまにどっしりと腰を据えたキャンプを楽しむときは、1.0Lを持ち出します。
軽量キャンプかゆったりキャンプか、自身のスタイルに合わせて選ぶのが良いでしょう。
ケトルは浪漫
ここまでレビューしておいてなんですが・・・
『キャンプにケトルは必要なのか?』と問われれば、はっきり言って不要です。
ケトルの担う役目はすべて、クッカーでもまったく問題ありません。
それどころか、クッカーならば湯沸かしの他に、調理や器など多目的に使えます。
さらに言えば肝心の湯沸かしでも、クッカー界にはケトルをはるかに凌駕する【ジェットボイル】という湯沸かしモンスターが存在しますからね。
要・不要で判断するなら、キャンプにケトルは要らないのです。
ではなぜ我々はケトルを使うのか、使いたくなってしまうのか?
それは、キャンプシーンにおいてケトルが究極の【ロマン装備】だからです。
ロマン装備について明確な定義はありませんが、概ね『無くても問題ないけれど、あれば抜群に雰囲気を盛り上げる』道具と言っていいでしょう。
はい、それだけです。
『雰囲気を盛り上げるだけ』の道具なんて、時間や収納に余裕のある実生活ならともかく、実用性が重要な場面では選びづらいものですよね。
ですがキャンプシーンとなれば話は別。
それは、キャンプがそもそも非効率や不便さをたのしむ行為だからです。
ケトルはまさにその体現と言っていい。
ロマン枠のないキャンプなんて、チャーシューのないチャーシュー麵みたいなものですからね。
ところで、お茶の席を楽しんだことはありますか?
いわゆる茶道というやつです。
趣きを凝らしながらも簡素で静かな『茶室』という空間に身を置き、茶を点てることに集中し、心を落ち着かせ、自身を見つめなおす。
茶道が今のかたちになったのは、有名な千利休のいた安土桃山のころだそう。
遠い戦国の時代では、茶の席は殺伐をした日常を忘れ、作法を通し茶に専心することでリラックスを得る『非日常空間』だったのではと思うのです。
好きなことに夢中になると、ストレスなんてぶっ飛んでスッキリするってやつですよ。
以前茶道を体験したとき、
「茶を飲むだけでこんな面倒なことやってられるか!自由に飲ませろや!」
なんて感想を抱いたけれど、それはぼくが、殺伐とは程遠いのほほんとした日々を送っていたからだろう。
だが世が世なら、茶道は日常を離れた『癒し』だったのだ。
そしてあるとき、ピンときた。
キャンプも同じではないか、と。
焚き火を熾してケトルを載せ、湯を沸かす一連の動作は、まさに非日常の癒し。
そしてそのとき、揺らめく炎の上にあるのはクッカー(実用道具)じゃダメ。
ケトル(ロマン装備)だからこそ意味がある。
茶道の詫び錆びは、簡素・質素といった「足りない状態」から美しさを見出す思想。
シンプルで飾り気のないトランギアケトルには、この詫び錆びをひしひしと感じるのですよ。
だから日本でも、こんなに受け入れられているのかなと、その姿を眺めながら思った次第。
もっている人も多いけれど、元がシンプルだからこそ、使い込んでいるうちにオンリーワンになっていく。
自身のキャンプの歴史を反映する、そんなギア。
トランギア325ケトルは良いですよ(笑)
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