3月上旬。
ついに、待ち望んだ晴れのキャンプがやってきた。
天気予報を見れば、2日にわたって雲マークすら出ていない、完璧なる快晴が続くとある。
そのうえ風は1mの微風ときた。
もう、出発の前日からウキウキですよ。
行先は裏磐梯。
いつもの『みちのくキャンプ場』に向かいます。
車を停めて、身に着けた装備を運転モードから雪原モードに変更したら、バックパックを背負って未除雪地帯に突入。
3月の雪は、もう固く締まって足が沈むこともない。
スイスイと100mも進んで行くと、なじみのポイントに到着です。
振り返ればこの景色!
抜けるような青空の下、磐梯山がキレイに映える。
とりあえず1枚パシャリと撮って、モニターを確認しながらコレに擬音をつけるのならば
ワンピースのおなじみ『ドーン!』か
はたまたジョジョの『バァーン!』が良いか
とりあえず設営前の軽い昼食を食べながら、ちょっと真面目に考えた。
で、結論は、いつのまにか忘れてたw
どうでも良いことを、どうでも良く楽しむのもまたキャンプ。
年齢を重ね、その時間の貴重さと得ることの難しさを実感している、今日この頃です。
この時期ともなると、積もった雪はもうずいぶんと硬い。
踏み固める必要もないほどで、設営はあっという間。
体力的には助かるけれど、冬の終わりが近づいているのを実感します。
ちょっと寂しいなぁ。
季節が移るということは時が進むというコト。
日々たのしい出来事もあるけれど、おいそれとは表にだせぬ悩みの一つや二つも抱えちゃうお年頃。
当然、時間だけではそれらを解決し得ないという事実もわかっていて、袋小路に迷い込んでるような気分も少々感じたり。
憂鬱さが心にチラリとわいてくる。
そんなとき・・・
見上げてみれば、バカみたいに澄み渡った空にいろいろ吸い込まれそうで、何だかどうでも良くなった。
晴れの効能は強烈だ。
いつもどおり、本を読んだりボーッとしたりして過ごすけど、なにせこのお天気の良さです。
テントに籠る必要も、風除けのタープも要らない。
オープンエアーが最高に気持ちイイーーー!
些細な事とか、ホンットにどうでもよくなってくるよね。
不意にラジオから80年代の曲が流れてきて、ほんの少しノスタルジックな気分に引っ張られた、心地の良い午後でした。
この冬から使い始めたギア、エアーマットをイスに変えるエアチェアの座り心地はかなりイイ。
クレイジークリーク系の座椅子より座面が広く、クッションも効いていて、包まれるような感じです。
雪の上なら、パンクの心配も少ないだろうしね。
今後は、雪中キャンプのレギュラー装備になりそう。
そこに座っての青空読書が時間を忘れるほど気持ち良くて、恒例の雪上散歩に出かけたのは、もう午後の4時をすぎた頃。
すこし歩いただけで、日暮れの気配が見えてきた。
こうなると暗くなるのはホントに早い。
普段なら焚火や夕食の準備をしていて、ぶらぶら出歩くことはあまりない時間帯です。
だからでしょうか?
ながく伸びる森の影に、いつもとはちょっと違う新鮮さを感じるなぁ。
1時間ほど遅いだけなのに、印象は違ってくるもんだね。
視点を変えて新たに見えてくるモノもある。
そういうのって、普段の反対側などではなくて思いのほか近い場所、実はほんの少し隣にズレただけの、影になって目に入りづらいような部分にこそあるんだろうな。
すっかり慣れてマンネリさえ感じていたキャンプでも、こうして新鮮味が残っているんだもの。
捨てたもんじゃないよね、いろいろと。
キャンプの楽しみと言えば、食。
本日のメイン食材は、餅でも食べてみようかと。
妻さんから処分依頼を承った、賞味期限の近い鏡餅を持ってきました。
毎年食べる機会を逃してしまいがちだけど、今年はちゃんと頂きます。
と思ったらコイツが硬くて、なかなか切れやしない。
いつも調理に使っている折りたたみのビクトリノックスでは、文字通り歯が立ちません。
餅ってこんなにカチカチになる物質だったっけ!?
『サトウの切り餅』はいつだってスッと切れるのになぁ・・・。
仕方がないので、フルタングナイフ出して叩き切ってやりました!
まさか、餅をバトニングするコトになるとはねw
今夜のメニューは、この餅を入れて、お雑煮です。
ユニフレームのミニロースターで炙ると、なんでもとにかく美味くなる。
お手軽でいいよなぁコレ。
ある程度焼き目が付いて、おこげの良い匂いがしてきましたよ♪
あとは、あらかじめ火を通していた具材とあわせ、完成です。
お味のほうは・・・
美味い!
いままでは、キャンプで餅といえば『おしるこ』だったけど、お雑煮も相当ウマいな。
簡単だし、これ気にいった!
いつのまにか、太陽は姿を消していました。
一番星、見っけ!
澄んだ空が、青から藍に変わってきた。
もうすぐ、夜になる。
昼間の暖かさは一変した。
雲のない空は暖気をどんどん吸い上げて、気温は加速度的に下がっていく。
放射冷却というヤツだ。
日中は10℃くらいあったのに、あっという間に氷点下まで落ち込んだ。
その冷え込み速度は体感的に分かるほどで、刻一刻と冷たくなっていく空気の感覚が面白い。
こういう夜は大気が澄み渡り、きれいな濃紺の空が広がる。
もう、なにもかもぶっ飛ぶくらいの神々しさ。
幻想的な月の美しさを想起させる曲に、ドビュッシーの『月の光』があるけれど、この時ぼくの頭の中に流れ出したのは、なぜかディープパープルの『ハイウェイスター』!
あたりに人影はなく、この雪原にいるのは自分ひとりだけ。
その事実に心がぶるりと震え高鳴る。
煌々とした月明かりの下、氷点下の夜をテントひとつで過ごすというシチュエーションは、クラシックではなくROCK!なのです。
自分でもよくわからんけどw
振り返ると、深い藍色に染まる夜闇の中、月光に照らし出された磐梯山の姿がはっきりと浮かび上がる。
そして変なテンションで盛り上がるオジサンがひとり・・・。
まぎれもなくロックでしょ、コレはw
静かに眺め、しんと佇んでいると、枝を巡らせた木の影が、時の流れとともにゆっっっくりと動いているのが見て取れる。
世界がすすむ、実感がする。
車で走ること1時間、スノーシューとバックパックで歩くこと3分。
それでこの自然が織りなすワンシーンの中に身を置いて味わえるのだ。
だから雪中ソロキャンプはたまらない。
翌朝。
ほんの少しの雲が空を覆っているものの、引き続き穏やかな良い天気。
気温は-6℃ほど。
放射冷却の影響か、この時期としてはまずまずの冷え込みだけど、思ったほどは下がらなかった。
キラキラのダイヤモンドダスト見たかったなぁ。
明るくなるにしたがって、ぐんぐん暖かくなってきました。
春が近いのを感じます。
のそのそとテントから這い出し、雪の上にクローズドセルマットを敷いて腰を下ろしたら、さぁ朝食だ。
いつものカレーメシに、ちょっとお高いソーセージ。凍ってシャリシャリになったうの花を添えて。
うん、やっぱりキャンプの朝は、こういう手抜き飯が好きです。
食べたらササッと片付けて、温泉によって帰る予定。
今期の雪中キャンプはこれで最後かな?
気持ちの良い晴天も満喫したし、美しい月夜も堪能したし、思い残すことはありません。
さて、次は春のキャンプになるのでしょうか?
4月に入れば、冬季休業していたキャンプ場も、だんだんと営業を開始します。
どこに行こうか、たのしみです。
最後までお付きあい頂きありがとうございました。
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