夏の終わりが見え始めた頃の、裏磐梯ソロキャンプ。
見上げた先にトンボがいた。
タープポールのてっぺんにとまって、じっと休憩中。
だいたい2メートルちょっとの高さかな。
逆光になってよく見えないけど、全身が赤いやつだ。
他にもロープに連なって休んでいるのが、ざっと6~7匹くらい。
みんな羽の先がチョンと黒いから、ポール先のとは別種みたい。
こちらの方々は、ときおり急に飛び立ってはまたすぐに戻ってきたりして、意外とせわしなく動いてる。
いっぽう、ポールの先にとまったアイツは、ずっと姿勢も変わらず、微動だにせず。
ときどき、羽の角度がちょっと下がる。
いちばん気持ち良さようだ。
ぼくのキャンプはとてもノンビリとしています。
メインアクテビティは『飲む(呑む)』と『読む』で、それ以外はまぁ、オマケみたいなもの。
次点で『食べる』があるけれど、手軽で簡単なのが基本。
日常から離れて、ゆったり過ごすのが目的ですから。
空のもと、さわさわと吹く風を感じながらチェアに座って、コーヒー片手に本を読む。
時が過ぎるのを忘れてしまうような、至福のじかん。

ちょっと疲れを覚えていったん本を閉じ、ぐ〜っと背伸びをしながら見上げると、まず空模様が目に入ってくる。
うん、良い天気。
この瞬間は晴れだろうと曇りだろうと、雨だって心地いい。
つぎに周りの様子。
物語に集中していた意識が現実へ戻るにつれ、次第にいろんなものが見えてくる。
いつの間にか、残り一口になったマグの中身。
空腹。
タープのたるみ。あとで直さなきゃ。
枝の先の微妙に色づき始めた葉。
さっきより、ちょっと下がった風の温度。
雲のかたち。
読み始める前にもいた、ポール先にとまった赤いトンボ。
・・・え、おまえ、まだいたの?
同じ個体なのかどうか確認する術はないけれど、なんとなく「アイツだ!」って気がしてならない。
チェアから立ち上がって、近寄ってみる。
他のトンボは皆、逃げてしまったなか、まったく気にもしないで休んでる。
相変わらず微動だにしない。
下方向って見えにくかったりするのかな?
羽はもう、これ以上ないくらい下がりきってる。
なんだか、すっごく可愛く思えてきたぞ。
「好きなだけ休んでおいで」
と、そんな慈愛に満ちた気分になって、ぼくはまたチェアに座った。
9月はじめのソロキャンプ。
あのトンボはナツアカネなのか、それとアキアカネなのか?
見分けが付かないのだけが、ちょっと心残りな読書の合間。
昆虫図鑑は家に置いてきてしまったのです・・・。
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